mokomokorabitsの日記

ハイヒールやフレアスカートが似合う女性を目指したい

叱る母

 先日、友達の家で大学生らしく(笑)集まってご飯を食べていて、日付も回ってみんな眠くなってきたころに、どういう流れだったかは忘れたけど、親から叱られて育ったかどうかの話になった。

 私の母は、よく叱るひとだ。小さいころから何かにつけてよく叱られた覚えがある。普通に怒鳴るし、軽く手を出された記憶もなんとなくある。母はもともと家族内で一番短気な質で、かつ気分屋で、機嫌がいいときはノリのいい関西のおばちゃんだが、機嫌が悪いときはむやみに関わらないに越したことはない。もちろん無意味に怒っているわけではなく、当然私が悪いことをしたのだろうし、私ではなく妹や父に怒っているときも、相手になにがしかの非はあった。年齢を重ねるうちに私も学んでいき、叱られる頻度は減ったが、それでも高校の時でもちょくちょく叱られていた。

 そんなこんなで、私は外では基本優等生だったため先生など親以外の大人に叱られることはなかったが、母親にはよく叱られて育った。小学校にあがったあたりから、母に対して「なんでこんなことで怒るんだろう」「そんなに怒らなくてもいいのに」と思う機会が増え、叱られないよう計算してふるまうとともに、沸点の低さに関しては母を反面教師にするようになった。中学生のときに「叱る」と「怒る」の違いを授業か何かできいたとき、母は「怒る」寄りだなと思ったし、その考えは今でも変わっていない。母とは対照的に父は基本的に温厚で気の長い人だから、私がどちらかといえばお父さん子だったのはそのことが深く関係している。

 でも、母のことが嫌いだったわけではない。よく怒る人だけど、機嫌が悪くないときの母は楽しくて親しみやすいし、過保護でも放任でもないほどよい距離感の親子関係を築けている自覚がある。頭の回転が速くて仕事も早い。しょっちゅう怒られたけど、愛されていないと感じたことはなかった。

 

 ここで最初の話にもどる。親に叱られて育ったかという話になったとき、同期の友達3人がほとんど叱られずに育ったそうなのだ。その場にいた残り二人も、「まったくというわけではないが、そんなに…」という感じだった。

 その後そのまま話は続いたけど、私はひそかに衝撃を受けていた。自分と同じように、みんな親に叱られて育っていると思っていたのに、少なくともその場では親によく叱られて育った私が少数派だった。

 でもよく考えてみたら、叱られたり怒られたりした記憶はあるが、何で怒られたのかその理由はあんまり覚えていなかった。いくつか印象に残っていることはあるが、叱られた総数に対して内容を覚えているのは1割にも満たないと思う。そもそも私は、自分で言うのもなんだが物心ついたときから家でも外でも聞き分けが良い子で、言われなくても宿題などやるべきことはやり、常に成績も優秀な方だった。だからもしかしたら、それほど私は悪くないのに怒られていたこともあったのかもしれないなと思った。でもそれは、そういえばよく怒られたな、懐かしい、という感情で、母への恨みを感じたというわけではない。

 

 昨日、母と電話する機会があり、「親からもほとんど叱られずに育った子が思った以上にいてびっくりした」と伝えたら、「あんたのためを思ってあえて叱ってたのよ―強い子になるように。計算の上よ」といつものノリで返された。私も別に母を責めるつもりでその話を持ち出したわけではないので、「私なんであんなに怒られてたんだろう」と笑いながら返した。それに対して母も、「あんまり思い出さないほうがいいんじゃない?理不尽かもよ」と笑っていた。

 でも話の終わりのほうに、「でももう一回子育てできるなら、今度は叱らずに育てたい」「あんたのことはちょっと叱りすぎたって私も反省してる」「あんたいい子なのになんであんな怒ってたんだろうね」と言われ、戸惑った。母がそんなことを考えてたなんて思わなかった。

 確かに私はよく叱られて育った。私以上に悪さをしていたり人に嫌な思いをさせていながら、私より怒られずに育った人は結構いるんだろうと思う。私のやや後ろ向きで自分に自信のない性格は、もしかしたら必要以上に叱られたことと関係しているのかもしれない。

 でも、叱られずに育って調子に乗って思いあがって勘違いしたり、ちょっと人にきつく言われただけでへこたれるような人間になるよりはよかったと思える。少なくとも私は、人をすすんで傷つけたりしないし、自分が大したことのない人間だということを正しく分かっている。私が叱られて学んだその当たり前のことを、当たり前なのにわかっていない人がいることを、20年間生きてきて知った。私は人より親によく叱られたけど、それは言い換えれば「ちゃんと」叱られてきたということなのだろう。今の若い子はすぐに会社をやめるから、上司も新入社員にきつく言えずとても気を遣うというこのご時世、叱られた経験というのはきっと貴重だ。

だからお母さん、私を必要以上に叱ったことを気にしているなら、それはもういいよ。

でももし将来私に子供ができたら、お母さんほどには怒らない母親になりたいかな(笑)