忘れていくこと
もし私が就活終わったことを連絡しなかったら、GW中ずっと地元にいても向こうから連絡はしてこなかったんだろうか。
私のこと振っておきながらその後2回もご飯行くのなんなんだろう、どういうつもりなんだろう、って思うけど、別にどういうつもりでもないんだろうな。
単純に話しやすくて仲のいい後輩だから、地元にいるうちに話しておきたい、ってだけなんだろう。それは全然かまわないし私も話したいんだけど。
本格的に現場配属になって仕事が始まったらなかなか休みは取れなくなるし、場所も場所だから会うのは厳しくなる。就活の報告ならなおさら早く話したい。
会えるうちに会っておきたい。
正確には、先輩が私と会うのを面倒だと思わないうちに。先輩の中でまだ私が鮮明に残っているうちに。
どんなにその時は重要だと思っていても時間と距離があったら人は忘れていく。それは高校から大学へ変わった時に身をもって実感した。高校の部活の部員も、高3のときのメンバーも、大学生になっても年1回は集まりたいねと言いながらまったく実現していない。それは決して、実際はそれほど仲良くなかったとかどうでもよくなったとかじゃなくて、単純にそれぞれの中で優先順位が下がっていくからだ。高校の友達を好きな気持ちは全く変わらないし今でも思い出してほっこりしたり笑えたりするけど、近くにあるのは今目の前の生活で、いま関わっている友達で、研究室で、アルバイトで。いま目の前にあることをこなしているうちに、会わないまま、思い出すことも減りながら時間は経つ。
気ままな大学生でもそうなのだから、社会人になったら尚更だろう。
私が先輩に告白したのは約2か月前で、2回ご飯を食べに行って、いろいろ話した。最後数か月でほんとに仲良くなれたと思うのは事実だ。その思い出はまだクリアで、最近で身近だ。だから、また機会があれば行きたいねとお互い思える。
でも先輩が現場に配属になって、仕事に追われる毎日になったら、だんだん私のことは忘れていくだろう。後輩として可愛がってくれているのは事実でも、日常の大半を仕事が占めるようになったら、そして距離が離れたら、思い出すこともどんどん減っていく。ただでさえ私たちは、いくら仲が良くても先輩と後輩以上の関係ではない。用もないのに連絡をする仲ではない。
そしてそれは私のほうも同じで、先輩よりはゆっくりだとしても、卒論やバイトや何かしらをして過ごすうちに、先輩の存在はだんだん薄れていく。こんなにも好きだったことは間違いない事実のまま、それでも少しずつ忘れていく。内定式、配属先発表、部活の演奏会、ちょっとしたきっかけで思い出してそのたびに懐かしく、会いたいなと思いながら、その頻度もその気持ちもだんだん小さくなっていく。
寂しいけど、当たり前のことなんだろう。
だから、会えるうちに。
連絡して日にちを決めてお店を決めてという段取りを厭わずにいられるうちに。
ご飯に行くまでのやりとりの面倒さと会って話したいという気持ちを天秤にかけたときに、後者が勝っていられるうちに。
これが終わったら、次こそ本当にいつ会えるかわからない。